メッセージ

           ~「真理とは何か」~  吉村知子                    

 イエスは宗教指導者たちに捕えられ、大祭司の屋敷に連行されました。そこで尋問を受け、その後ローマ総督ピラトの官邸へと送られました。ここでイエスはローマ帝国側の人間と対峙します。イエスの公生涯を振り返ると、出会う人々はほとんどがユダヤ人なので、話す内容も彼らが理解しやすい日常生活のたとえや、旧約の教えなどが土台になっていました。しかしピラトはギリシア・ローマ文化の中で生きた人物です。ピラトはイエスを尋問する中で、「真理とは何か」という哲学的な問いを発します。ユダヤ人がイエスを逮捕し、死刑判決を求める以上、それなりの罪状があると思い、直接イエスに「あなたはユダヤ人の王か。いったい何をしたのか」と尋ねます。するとイエスは「私の国はこの世に属していない。私は真理について証しをするために生まれ、この世に来た。真理に属する人は皆、私の声を聞く」。それを聞いてピラトは即座に「真理とは何か」と尋ねるのです。
古今東西、多くの人が「真理とは何か」について考えてきました。これは永遠のテーマです。しかしここに、ピラトに代表されるギリシア・ローマ思想が真理とは「何か」と問うのに対して、ヘブライ思想では真理とは「誰か」と問うのです。旧約で真理とは「神の啓示」を表します。イエスは「私は道であり真理であり、命である」とおっしゃいます。真理という抽象的な概念の、具体的な表れがイエスであり、イエスの全生涯は真理を体現したものと言えるでしょう。