メッセージ

 

~「空の墓から始まる」~ 小林大記

イエスの十字架上での非業の死の後、三日後に女性たちはイエスの亡骸に埋葬の準備を施すため墓へ向かいます。自分たちには墓の前の石を動かすほどの力がないことを知りつつも、突き動かされて、足取りを止めることができずに墓へ向かう女性たちの姿があります。自分たちにはできないことがある。動かせない現実がある。でもなんとかしたい。できることを精一杯したい。いや結局何もできないかもしれないけれど、せめてイエス様のそばにいたい。やれるだけのことをやろう。その溢れ出るような思いが、この女性たちの姿に現れているように思います。するとなんと、墓の石は転がされていた。神様は、この彼女らのような「なんとかしたい」という姿を顧みてくださる方なのではないでしょうか。時として神様のなさることは、人が望むような形ではないときもある。しかし神様は、なんとかしたい、というような切実な思いを知っていてくださる方であり、覚えてくださる方であります。
 女性たちは、イエスの復活の出来事を弟子たちにすぐには伝えられませんでした。しばしの葛藤を抱えつつも、「あなたたちが行きなさい」という青年からの語りかけを何度も思い返したのではないかと思うのです。神は、痛みを抱えた人たちに、落ち着いて納得してから行動するように促し、主体的な宣教の働きを委ねられる方です。その歩みは、空になって虚しくなっている墓から始まったのであります。